
オーケストラへのエキストラ依頼があり、オペラの全幕演奏に参加しました。
結論
長崎の宝オペラ「蝶々夫人」演奏に関わることができて本当に幸せ
概要・あらすじ


【時と場所】
1890年代、長崎【登場人物】
蝶々夫人(S): 15才の芸者
ピンカートン(T): アメリカ海軍士官
シャープレス(Br): 駐日アメリカ総領事
スズキ(Ms): 蝶々の女中
ゴロー(T): 結婚仲介人
ボンゾ(Bs): 蝶々の叔父で僧侶
ケート(S): ピンカートンの母国の妻
ほか【第1幕】
時は1890年代、舞台は長崎の港を見下ろす丘に立つ家。アメリカ海軍士官のピンカートンは、結婚仲介人ゴローの斡旋によって、現地妻として蝶々さんと結婚します。アメリカ総領事シャープレスが、ピンカートンの行為は軽率だと忠告しましたが、彼は聞く耳を持ちません。
蝶々さんは武士の家に生まれましたが、父が切腹するなど没落して芸者となっていました。このとき15才。結婚を心から喜んでいて、キリスト教に改宗までしました。しかし、その改宗に怒った叔父の僧侶ボンゾが、結婚式に怒鳴り込み、他の親戚もあきれて帰ってしまいます。悲しむ蝶々さんでしたが、ピンカートンが彼女をなぐさめ、二人は初夜を過ごしたのでした。
【第2幕】
結婚生活も束の間、ピンカートンがアメリカに帰ってしまって3年が経ちました。彼の帰りをひたすら待つ蝶々さん。ある日、総領事シャープレスがピンカートンの手紙を持って現れます。シャープレスはその手紙を蝶々さんに読んで聞かせようとしますが、ピンカートンの帰りを信じる蝶々さんを前に最後まで読むことができません。逆に、二人の間にできた3才の子を見せられ、ますます真実を話せなくなりました。シャープレスが帰ったあと、蝶々さんは長崎の港にピンカートンの所属する軍艦が入港したのを確認します。そして喜んで彼の帰りを待つのでした。
結局、一晩中寝ずに待っていましたが、彼は帰って来ません。朝、蝶々さんが子供と寝室で休んでいると、ピンカートンとその妻ケートが訪ねてきます。女中のスズキから蝶々さんの思いを聞いたピンカートンは深く反省し、耐えられずそこから立ち去りました。直後に蝶々さんが起きてきて、アメリカ人女性の姿を見たとき、彼女はすべてを悟ります。子供を預かるというケートの申し出に、蝶々さんは彼が迎えに来るなら渡すと言いました。
そして、ピンカートンが駆けつけたときには、すでに彼女は父の形見の短刀で自害していたのでした。ネットより引用

感想
ピース文化祭の関連公演であるオペラ「蝶々夫人」全幕公演(二日公演)に参加しました。オーケストラのエキストラ出演依頼が来たためです。長崎では過去にも数回の全幕公演があり、私はそれに参加した経験があったため依頼がきたわけです。
私より上手なプレーヤーはたくさんいらっしゃるわけですが、オペラの伴奏はかなり特殊性があり、過去の経験がある人が必要だったということです。とても光栄に感じ、お引き受けしました。7月くらいから月2~4回の指揮者練習に参加してきましたが、いよいよ本番前の10月は8回の指揮者練習でハードでした。しかしおかげで弾けなかった部分もだいぶ解消されていきました。
今回の公演では1日目の歌手陣が藤原歌劇団メンバーが担当し、2日目がオーディションで選ばれた長崎の歌手陣が演奏します。
練習の中で感じたことは、星出豊マエストロは2幕2場でのピンカートンの懺悔のアリアへの思いが強いということ。ピンカートンは遊び気分で芸者の蝶々さんと結婚をし、子どもも産ませたのに3年も戻らず、戻ったと思ったら正妻を連れてくるというクズ男なわけです。
しかしこのアリアによってピンカートンは自分がしたことを本当に酷いことをしたと懺悔する。それによって蝶々さんから許されるのだということを、星出氏は練習の中で何度も語りました。
クズ男ピンカートンは蝶々さんに許され、たぶん観客にも許される。しかし、名誉のために自死する蝶々さんの行為を見て、一生後悔にさいなまれていくことでしょう。それがラストの彼の悲痛な「蝶々さん!」という叫びに現れている。ドラマに大きな起伏を与えていると感じました。
さてオペラの特殊性として、伴奏をするオーケストラはオケピットという狭い暗い場所で演奏するということがあります。久々のオケピット入りですが、やはり狭かった。私の後ろにはオーボエの譜面台が立っていて、私が背筋を伸ばすと譜面台が後頭部に当たるほどです。

譜面台の上に小さな灯りがともされ、ぎりぎり譜面が見えるような状態で演奏します。もちろん展開されている舞台の邪魔にならないような配慮なわけです。ピット内からはもちろん舞台は見えず、お客さんもずっと上の3階席くらいしか見えない状況です。
そんなぎりぎりぎゅうぎゅうの状態がオケピットです。オーケストラ配置もいわゆる交響曲をやるときとはかなり違っています。弦楽器だけで言うと、観客側から見ると左から第2バイオリン・第1バイオリン・チェロ・ビオラとなります。ベースはというと、第2バイオリンの後ろの方に並んでいます。
普段きこえてこないトロンボーンの音がすぐ後ろから響いてきたりします。私は中央よりで、指揮者の真正面となりとても見やすかったですね。譜面と指揮が同時に見れる感じです。
さてプッチーニが書いた音楽ですが、メロディックな名旋律の連続に驚きます。その中に、日本的な旋律が挟み込まれます。さくらさくらや越後獅子、なんと君が代も出てきます。チェロには各幕に1度は美しいソリ(セクションのソロ)が登場します。
同じオペラでもモーツアルトのそれとは大きく異なります。モーツアルトのオペラが、個々のアリアがあってその間をレチタティーボという語り的なものでつなぐのに対して、プッチーニのオペラは全部がつながっている形です。調や速さが変わることで曲は変化していきますが、そのすべてが連続しています。
ですからさっきまで付いていた#(シャープ:半音上げる)がもう無くなっているということがあり、「おっとあぶない」ということがありました。
オペラのエンディング、最後の音がやむと舞台もオケピットもすべての灯りが消えて会場全体が真っ暗になる演出が施されました。再び灯りがつくと万雷の拍手と「ブラボー」の声。ああ観客の皆さんに楽しんでもらえたんだなと大きな喜びに包まれました。
打ち上げのレセプションにも参加しましたが、主役の皆様スピーチもとてもお上手で楽しませてもらいました。ありがとうございます。写真は長崎組タイトルロールの二枝さん。


久しぶりにオペラの演奏ができてとても幸せでした。故郷長崎が舞台の世界も名曲オペラ「蝶々夫人」を長崎で演奏することをこれからも定期的に行っていただきたいものです。長崎の宝なのですから。

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