オスカーは逃したが「フェイマンズ」公開中 過去のスピルバーグ作品をアマプラで再試聴 「ペンタゴンペーパーズ」「ミュンヘン」一度乗ったら降りられないサスペンス

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samon
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アカデミー賞の発表が行われ、「エブリシング・エブリホエア・オール・アット・ワンス」が予想通り強く7部門を取りました。「フェイブルマンズ」は作品賞・監督賞とも逃しました。現在公開中ですが、私は視聴にそなえ、アマプラで過去作を復習中です。「エブエブ」も公開中。両方とも行かねば!

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結論

一度見始めたら抜けられな一級のサスペンス作品。名優達の演技が炸裂し、それがカミンスキーの美麗絵画で描き出されます。テーマも明快で、まさに映画ウマ男のスピルバーグの手腕に驚愕する2作品です。

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ペンタゴンペーパーズ/最高機密文書

スピルバーグが「ベトナム戦争」を間接的に取り上げた作品。戦争シーンは冒頭の数分だけで、後は新聞社間、社主と取締役、政府と報道などの知の戦争が繰り広げられます。冒頭のベトナムシーンから、現地での記録記者が戦争の実態を隠蔽する事実を知り疑念をもつシーンの冒頭のスムーズさは実に見事で、映画の世界に一気に引きこまれていきます。

ワシントン・ポスト紙の編集主幹ベンを演じるトム・ハンクスとスピルバーグは「プライベート・ライアン」依頼5度目のタッグで、まさに「スピルバーグ」組の一人です。各作品で全く別人に見えるハンクスの演技力にスピルバーグは惚れ込んでいるのでしょう。

加えて今回はワシントン・ポスト紙社主ケイを、名女優メリル・ストリープが演じます。スピルバーグ・ハンクス・ストリープの3人が組むのは初めてのこと。ストリープは今回の演技でアカデミー主演女優賞を得ています。父親が元社主で、その名家のお嬢さんだった彼女が、夫の自殺から社主を引き継ぎいでいます。

苦手なスピーチや取締役の男性達の中で戸惑い自分の意見を言えない映画前半から、難しい決断をするクライマックスまでその演技は本当にすばらしく、感動すること必至です。

役者で印象に残ったのは、ペンタゴンペーパーズ漏洩の情報源に気づいて体を張って動いていく、バグディキアン役のボブ・オデンカークの深い表情です。顔の半分が影になるその絵を撮影したのは、スピルバーグが手放さない撮影監督ヤヌス・カミンスキー。本作でも粒子感が本当に美しい絵を残しています。

これだけの名作が、スピルバーグ作品上では最も製作期間が短かったというのですから驚きです。スピルバーグは「この映画は私たちにとっての『ツイート』のようなものです」と発言しています。唖然とします。本作は「レディプレイヤー1」と同時進行で進められており、大作を同じ年に2本創る監督の手腕にはすごいとしか言葉がありません。

ちなみに本作も「レディプレーヤー1」も音楽はジョン・ウイリアムズに依頼されましたが、彼は2つは無理と、本作の方に集中したそうです。同じ年に2本同時に作り上げるスピルバーグの神業は、今回だけでなく、「ジュラシック・パーク」と「シンドラーのリスト」の時もそうでした。驚愕!

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ミュンヘン

1972年に起きたパレスチナテロ組織「黒い九月」による、ミュンヘンオリンピックに参加していたイスラエル選手およびコーチの殺害人質事件とその報復を行っていく、イスラエル諜報特務庁(モサド)のメンバー達を描く2時間44分の長尺の映画です。

銃や爆弾などで、一人ずつ報復していくチームのリーダー:アヴナー(エリック・バナ)は徐々に変化していきます。スピルバーグも「自分はイスラエルに味方するわけでも敵対するわけでもなく、暗殺に手を染めていくことで精神的に病んでいく主人公達の苦悩を描きたかった」と語っています。

これは映画の公開後、パレスチナ側から「イスラエル寄りの映画だ」との批判が出たことへの監督の返答でもあります。

シンドラーのリスト』でイスラエル寄りとされてきたスピルバーグだが、今作では逆にパレスチナ・テロリストとイスラエルを共に批判する様な描き方をしているため、双方から批判を受けた。特にイスラエルから「反イスラエル的」の非難を浴びた。

wikiより引用

両方から批判されてしまうことは、中立的描き方をしている証左ともいえるでしょうか。

映画冒頭に赤い文字で「事実にインスパイアされた作品」とクレジットが出ます。彼が描きたかったのは、永遠に続くかのようなパレスチナとイスラエルの対立の不毛さなのでしょうか。

今回も撮影監督はヤヌス・カミンスキー。手放さないですね。今回は冒頭のオリンピック村襲撃やその後の銃撃戦、ヘリコプターの爆破などは、ドキュメンタリータッチを出すためか、手持ちカメラで揺れる画面が多用されます。

しかし、美麗絵画もいっぱい。私が印象的だったのは、後半の駅舎の場面で、ガラス屋根から振り込む黄金色の光の中に登場人物のシルエットが浮き上がる絵ですね。本当に美しい。また、仲間の一人が自殺する場面は、朝の河畔のようで、周囲はブルーです。そこにやはりシルエットが重なります。状況は悲惨なのにそれをあざ笑うかのように美しい。

samon
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両作品とも、見始めれば引きこまれてしまう、一級のサスペンス映画です。名優たちの演技が美麗な映像で描き出され、主張するテーマが明確に見えてきます。それらの全てを采配していく映画作りの名人がスピルバーグなのですね。すごい人です。彼を映画の世界につなげた若き日々が描かれるのが「フェイブルマンズ」。劇場鑑賞が楽しみです。今回の2作品もぜひアマプラで御覧ください。

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