エリックス・ガーランド監督作品「シビルウォー/アメリカ最後の日」迫真のリアリティ 4人のジャーナリスト達のロードムービー

Movie
スポンサーリンク
samon
samon

公開2週目。ユナイテッドシネマ長崎3番スクリーン。平日13:45の回。かなり少ない。町は今日からお祭り。

スポンサーリンク

結論

ワシントンDCまでのロードムービーの形で、分断された国の地獄めぐりが始まる。若きジャーナリストの成長と彼女を見守る仲間達。

スポンサーリンク

概要・あらすじ

今や世界を席巻するA24が、史上最高の製作費を投じ、アメリカで起きる内戦を描く『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。メガホンをとったのは、『28日後…』で脚本を担当し、長編デビュー作『エクス・マキナ』で 第88回アカデミー賞®️視覚効果賞を受賞する快挙を果たしたアレックス・ガーランド。世界71の国と地域で(7/18時点)公開を迎えた本作は、2週連続で全米第1位を獲得した。11月に大統領選挙を控えるアメリカ国内では、本作の内容が物議を醸しており、バイデン大統領・ハリス副大統領も鑑賞を希望しているという。

公式HPより引用

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

同上

スポンサーリンク

感想(ネタバレ注意)

冒頭大統領の勝利宣言の練習場面。カメラはボケたりフォーカスが合ったりと初めからドキュメンタリータッチです。

全編ドキュメンタリータッチですが、さらにその中に主人公のキルスティン・ダンストとケイリー・スピーニーの二人の報道カメラマンの映した写真が静止画で出るのがひと工夫されています。

キルスティンのデジタルカメラ(カラー)とスピーニーのフィルムカメラ(モノクロ)。若いスピーニーがオールド機材を使うこだわりは、彼女がこの道に入ることになる道筋を示しているのでしょうか。

枚数にこだわりなく撮影削除できるデジタルカメラ。サミーの死の映像を削除するキルスティンは、自分の中にもまた外部にも残しておきたくない記憶だったことが伺われます。

物理的に感光するフィルムカメラでは、そのネガやプリントされた写真は、意に反して残り続ける可能性があります。

デジタルデータも意に反して、ネット上で拡散される可能性もあります。どちらにもプラスマイナスはあるということですね。堂々めぐりかな。

猛スピードの2台の車で並行して走り、窓越しに人が移動するサスペンスが楽しそうに描かれます。似たシーンを伊丹十三の「お葬式」に見ます。そこでは、人間でなくサンドウイッチか何か食べ物を受け渡すわけですが、移動物が小さいぶん車同士は近づかねばならず、結構スリリングです。

この人間移動に関連する二人が、どちらも東洋人なのは?という感じでしたが、その後のエピソードでその理由は判明します。同じ東洋人の私たち日本人にとっては気分が悪くなるシーンです。

ここで登場する迷彩服に赤いサングラスの男を演じるジェシー・プレモンスはキルスティン・ダンストの旦那さんです。マット・デイモンのそっくりさんと言われますが、今回は赤いサングラスのせいか得体の知れない人物としてデイモンっぽさは感じません。

彼が東洋人にたずねる「どんな種類のアメリカ人だ?」は移民を受け入れてきた人種のるつぼたるアメリカの終焉を感じさせます。

そして内戦状態の中では、誰が仲間か敵かが判然としなくなる。クリスマスソング流れる中、狙撃者と対峙するこれまた二人の狙撃者の描写がそれをあらわしています。先の赤サングラスの男らも敵か味方か全然わかりませんね。それは恐怖です。

本作は若きカメラマンケイリー・スピーニーの成長譚でもあります。3人のジャーナリスト達との旅を通して、戦場という生死わからぬ場で、モノクロフィルムに衝撃的なシーンを焼き付けていくにつれ、とんでもないアドレナリンの流出と達成感が彼女を捉えて放さなくなる。彼女の興奮に満ちた喜びの表情はそれを感じさせます。

それはトム・クルーズの危険な撮影を自身がやる行為とも似ています。トムはアドレナリンの流出を忘れられないのではないでしょうか。危険な山にチャレンジする登山家も探検家も同じかも知れません。

ケイリーの成長は、自分を救ってくれたキルステンを省みることなく、大統領の潜む場所に進むことで頂点に達しています。恩師の死より決定的な写真を選ぶ彼女は戦場カメラマンとして完成されたといえるでしょう。

対比的にケイリーを救うキルステンは、大統領官邸突入時のやたら怯えた様子や友人サミーの死の画像を削除する姿から、人間性をもつ者として描かれています。そのどちらが良い悪いという問題ではありません。どちらの側の人も存在し、どちらも尊いと思いました。

この作品は美しいシーンもたっぷりです。特にサミーの死を象徴するような焼ける森の場面は忘れられません。

samon
samon

銃の音が本当に怖いので、ぜひ劇場のよい音響で御覧ください。超オススメ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました