エメラルド・フェネル脚本監督作品「プロミシング・ヤングウーマン」を観ました。
U-NEXT無料トライアルも残り少なくなってきました。付与されたポイント600ポイントを使うために、ポイント払い作品を探しました。「花束みたいな恋をした」にしようか迷っていたとき、この作品を見つけました。映画評論の論客、ライムスター宇多丸が2021年度ナンバーワンにあげていたことも引き金になりました。
「プロミシング・ヤングウーマン」将来が約束された女性。非常に優秀な医学生であったニーナとキャシー。まさに、将来が嘱望された二人だったが、ある事件により、ニーナは自死し、キャシーは大学を中退します。このニーナの死の理由をあばき、一人一人に復讐していくというのが物語の大筋です。
と聞くと、暗い復讐劇に思われますが、それをポップでカラフルでかつスリリングに仕立てているのが、監督の才能であると思われます。
冒頭から、おじさんたちがクラブで踊るその下半身がスローモーションで撮られます。腹がせり出した下半身あり、シャツが出た下半身ありと思わず笑ってしまいます。そして、泥酔したキャシー(キャリー・マリガン)が登場し、送り狼のおじさんがアパートにつれこんで、事に及ぼうとする寸前に「あんた何してんのよ」と実はしらふの姿を見せ、それに「ふうつのおじさん」はびびってしまいます。
なぜ、こんなことをしているのか?そこには親友ニーナが泥酔させられて、集団レイプされた背景があるのです。ニーナがされた事への鉄槌を同じ事をする男たちにくらわしているわけです。
そんなおじさん狩りを続けているキャシーの前に、かつての医学部時代の同級生が偶然姿を現し、彼の情報で、ニーナをレイプした男たちや擁護しなかったり、無視した女たちの現在が分かり、キャシーはその一人一人に復讐を展開していくのです。
ひとつひとつの復讐エピソードが実に痛快です。途中には、復讐に明け暮れていたキャシーにロマンスも訪れます。しかし、ロマンスの相手がかつてのニーナのレイプを撮影して男であったことが知れてしまいます。そして、最後の復讐へとキャシーは歩み始めます。
この映画に出てくる男たちそして女たちは、極悪非道の連中というわけではありません。いわば、ふつうの人々。その普通の人々が行った「若気の至り」や「すきをみせるからよ」「酔っ払う方も悪いのよ」あるいは「はっきりとしない場合は、有望な男性を援護する」などというたいへんありがちな流れへの痛烈な批判が、この映画の主張ではないかと思われます。
この映画では、レイプされているシーンが動画で撮影されている設定ですが、その画像自体が画面に流れることはありません。また、おじさん狩りのシーンでも、ヌードシーンや性交シーンは皆無です。つまり、この映画自体がそのようなシーンで客を集めるものではないという、ある種の誇り高い矜恃で貫かれているようにも思われます。
いわゆるデートレイプ的なよくある事件とその対応への痛烈な批判というテーマを貫きながら、同時にポップで楽しく、なおかつスリリングなおもしろさも兼ね備えた、類い希な作品であると感じました。ぜひご覧ください。大おすすめ作品です。
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