アンディ・ウィアー著「火星の人」読了 究極のサバイバルを支えるそこぬけのユーモアと仲間たちの友情 映画と違うクライマックスのサスペンス

スポンサーリンク
samon
samon

リドリー・スコット監督作品「オデッセイ」原作本を読み終えました。2時間にまとめられた映画のもとにはとんでもない日数のサバイバルがありました。

スポンサーリンク

結論

映画とは桁違いのサバイバルの重み。クライマックスの改変は、私は原作に一票。

スポンサーリンク

概要・あらすじ

『火星の人』は、アンディ・ウィアーの小説で、2035年の火星を舞台に、一人取り残されたアメリカの宇宙飛行士マーク・ワトニーのサバイバルを描いています。

2011年に自費出版され、2014年にクラウン・パブリッシングより再出版されました。2014年のベストSF第一位、星雲賞を受賞しています。

物語は、火星を離脱する寸前に折れたアンテナがマーク・ワトニーを直撃し、砂嵐のなかへと姿を消すところから始まります。誰もが彼は死んだと思い、遺体の回収もできないままチームは火星を旅立ちました。しかし、彼は奇跡的に一命を取り留めていました。

マークは、居住施設や探査車は無事ですが、残された食料では次の探査隊が到着する4年後まで生き延びることは不可能だとわかります。彼は不毛の地で食物を栽培すべく対策を編み出していきます。

この物語は、運悪く火星に1人取り残されてしまった宇宙飛行士と、ひょんなことから彼が生きていることを知ったNASAメンバー達の活躍を描いています。

生成AI
スポンサーリンク

感想

まだまだ生成AIは完成品とはいいがたいですね。上記部分最後の方で、「『ひょんなことから』彼が生きていることを知った」は実に不思議な印象を受けます。実際は火星の定点観測をしていたNASAの確か女性職員が、写真の小さな変化に気づき、ワトニーの生存を知るスリリングな場面なのです。「ひょんなこと」とはのんきな表現です。

「ひょんなこと」を調べてみると、「意図しないこと・ちょっとしたこと」とあるので、意味はあながち間違いではないのですが、のんびりムードを感じてしまうのは私だけでしょうか。

映画「オデッセイ」と本原作との印象の違いはいろいろあります。火星に取り残される主人公ワトニーの日記は「ログエントリー ソル549」が最後なので火星カウントで549日もの間彼は生き延びたわけです。この膨大な日数を原作では実に丹念に描き出していきます。

これは2時間の映画では難しい。彼の膨大なサバイバル活動を一緒に体験できるのが原作の大きな強みです。彼のサバイバル活動の間にはさまれるのが、地球のNASAメンバー達の奔走ややきもき、そしてマスコミや一般大衆の動きです。さらに火星で共に活動していた仲間たちの会話や行動。これらがうまいバランスを保って、読者のページをめくらせていきます。

惑星にたった1人という究極の孤独でいつ生命の危機に陥るかわからないそのストレスたるや想像を絶するものです。そのストレスを打ち負かしていくのは、ワトニーの底抜けの明るさ、ユーモアです。火星日記の中から発せられるユーモアに、読者は火星の危機を忘れてしまうほどです。だから安心して読んでいけるともいえます。

アンディ・ウィアーのSF小説は、SFジャンルのハードルをぐんと低くして、楽しんで読めるものにしてくれました。現在映画化進行中の「プロジェクト・ヘイルメアリー」も原作小説は実に楽しいものでした。これも大オススメです。

クライマックスのワトニーのキャッチ作戦は、映画では大きな改変が加えられていました。

映画では、船長ルイス(女性)が自らワトニーをキャッチする行動に出ます。ところが命綱のケーブルが足りず、ワトニーにとどかない。ワトニーは自分の宇宙服の一部に穴を開け、そこから出る空気を推進力にしてルイスのところまでたどり着きます。飽くまでワトニーをヒーローにしています。

原作では、ルイスは船長ですから全体指揮を執り、男性の船員がキャッチに出かけます。ワトニーは火星脱出船で待っているだけです。しかし脱出船からワトニーをピックアップする時間が限られていて、カウントダウンされるサスペンスでハラハラさせます。

映画の宇宙服に穴を開けるというアイディアは、原作ではワトニーが提案しますが、船長ルイスはこのアイディアから、救出船に穴を開けてその推力でワトニーに近づくという作戦を思いつきます。

宇宙服に穴と宇宙船に穴では、そのスケール感は大きく違うのでこのクライマックスも十分に盛り上がります。また、ワトニーだけでなく救出側のメンバー一人一人がクローズアップされるのがいい点です。

samon
samon

映画がすこし軽い印象を受けていましたが、原作を読んでみるとそのサバイバルの積み重ねの重さをがっちり感じることができます。読みやすいSF作家アンディ・ウィアーぜひ注目して読んでみてください。超オススメ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました