謎のホーソーンの正体のヒントがちらりと提示。今後のシリーズの楽しみが増える。
結論
全編にちりばめられた複線やヒントがすべて回収されるラストの驚愕。それほど苦々しくない今回のホーソーンとちょっと嫌な面も見せるホロヴィッツが楽しい。
概要・あらすじ
『ナイフをひねれば』は、アンソニー・ホロヴィッツ作、山田蘭訳のミステリ小説で、探偵ホーソーンを主人公にしています。
作家のホロヴィッツは、探偵ホーソーンが主人公のミステリを書くことに耐えかねて「われわれの契約は、これで終わりだ」と告げます。翌週、ロンドンで脚本を手がけた戯曲の公演が始まりますが、いきなり酷評する劇評を目にして意気消沈します。ところがその劇評家が殺害されてしまい、凶器はホロヴィッツの短剣だったことから逮捕されます。逮捕されたホロヴィッツにはわかっていました、自分を救ってくれるのはあの男だけだと。
生成AI
感想
今回のホーソーンは相棒ホロヴィッツにかなり優しく接する点が特徴的です。
逆にホロヴィッツの情けなさやホーソーンのプライベートを探る品のなさが描かれ、これまでの二人の印象とは少し異なる感触を受けます。
またホロヴィッツが演劇が好きで、物語の中でも実際にも戯曲に熱を上げています。しかも驚くことに物語中に登場する戯曲「マインドゲーム」は架空の戯曲でなく、英国内での上演からオフブロードウェイでも上映された実際のものです。アメリカの上演ではケン・ラッセル演出という豪華版。
巻末の解説では、これまでのホーソーンシリーズでも、演劇ネタは至る所にちりばめられていることが書かれています。気づかなかったなあ。
例えば第1作「メインテーマは殺人」にはシェイクスピアへのこだわりがそこここに顔を出すらしい。
「その裁きは死」では、十代から演劇に熱中し、戯曲を書きたかったと告白しているらしい。
ホロヴィッツが大好きな演劇の世界が描かれるのが本作「ナイフをひねれば」であるわけです。
犯人はある時点でぴんときますが、それまでのちりばめられている複線やヒントがすべてぴたっとはまるのがやはりいつもながら驚かされました。ぜひお読みください。オススメ!
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