ひとくち宝珠

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高田郁著「小夜しぐれ」読了しました。みおつくし料理帖シリーズ第5巻も楽しませてもらった。本巻最後の物語「ひとくち宝珠」は小松原の苦悩の一話。澪をはじめ「つる屋」のいつものメンバーは一切登場しない。公方様に献上するお菓子をめぐる話だ。将軍御用達の菓子屋の菓子でなく、オリジナルの菓子を出せと求められ、その責任者となったのが小松原。ありとあらゆる菓子を食べ歩くが、オリジナルは浮かんでこない。妹の婿の弥三郎(小松原の友人)や妹の早帆が登場し、早帆や母親の里津の猛女ぶりが開陳される。早帆は小松原が心に思う澪のことを知っており、「自分が何とか道を開こう」とまで小松原に伝える。澪のことが出たことから、澪との思い出の「節分の炒り豆」のことを思いだし、早帆と共に、炒り豆を臼で挽き始める。そして完成したのが「ひとくち宝珠」という菓子である。澪を登場させず、小松原の思い出の中で描いていくあたりが実にうまいなあ。思い出の中の人って、えてして現実の人より美しいじゃない。

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