ちょっと油断していたら「フェイブルマンズ」は終わっていました。回転速いです。「エブエブ」ももう一日1回の上映になっています。劇場は春休みの子ども向けアニメ等で埋め尽くされています。そんな中スピルバーグの未見の作品が図書館にあったので、観てみましょう。
結論
カミンスキーの芸術画、ジョン・ウイリアムズの劇伴、スピルバーグの演出力が一体となったエンターティメント。戦場シーンの迫力、人間の愚かさとすばらしさを描きつつ、何より馬の演技に驚愕し感動すること間違いなし。オススメ!
あらすじ・概要
1914年のイギリス。丘陵地帯に住む少年アルバートは、愛馬ジョーイと固い絆で結ばれていた。ところがジョーイは軍に徴用され、戦地フランスへと送られてしまう。愛馬を救うため、アルバートは危険を冒して渡仏するが、その頃ジョーイも過酷な運命をたどり……。
解説 スティーヴン・スピルバーグが監督を務めるヒューマン・ドラマ。イギリスの児童文学作家マイケル・モーパーゴの同名小説を基に、戦火に引き裂かれてしまう少年と馬の友情の行方をドラマチックに描く。愛する者を救うための過酷な旅を、詩情豊かな映像で綴る。主演を務める英国出身の注目の新星ジェレミー・アーヴァインの熱演も見ものだ。
ここから引用
作品
作品はいくつかのパートに分かれます。
1)ジョーイの誕生→アルバートがジョーイを愛情をもって育てていく
2)ジョーイは軍に売られ、兄弟兵士と出会い別れる
3)ジョーイは村の孫娘と出会い、孫娘は死んでしまう
4)ジョーイはドイツ軍に接収され、大砲を引く過酷な労働を強いられる
5)ジョーイはドイツ軍を脱出し、ドイツ・英国の中間地点で鉄条網に絡まれ倒れる。それを両軍が協力して助ける→コイントス!でジョーイは英国側に行く
6)成長し英国軍に参加していたアルバートとジョーイが再会し故郷へもどる
1)のアルバートとジョーイのシーンの中でも、荒れた石だらけの土地を耕していくシーンが感動的に描かれています。地主や村の人々の冷ややかなまなざしの中、雨も降り出す中、力強く土を鋤いていくアルバートとジョーイの頑張りは印象的です。
3)はほとんど若い女性が登場しない本作の中で、かわいい少女が登場しホッとさせてくれるところです。ドキドキのドイツ軍の略奪シーンはスピルバーグの得意なサスペンス演出。全てを奪っていくドイツ軍は「七人の侍」の野武士を思い起こさせます。「七人の侍」の場合若い女も奪われてしまいますが、本作では少女にすることでその行為はまぬがれています。
4)大砲をサラブレットであるジョーイが引く過酷さは、大砲の巨大さ重厚さ故にひしと伝わります。相棒馬のトップソーンが死んでいくシーンを加えることで、この過酷な労働の激しさがより増しています。略奪ドイツ軍の司令官の冷徹さと、2頭の馬にやさしくするドイツ軍兵士が対比させて描かれます。ドイツ兵の中にもいい人間がいるということを示し、次の場面の伏線にもなっています。
第一次大戦のシーンは「プライベート・ライアン」冒頭に劣らぬほど戦争の惨状を見せつけてくれます。飛んでくる弾丸の恐怖、大砲の砲撃で人形のように吹っ飛ぶ兵士の姿に戦争の恐ろしさを実感できます。人間って本当に愚かです。
そんな愚かな人間達が、一頭の馬に対して協力して助けるシーンが映画の一番のクライマックスでしょう。人は愚かだけれど素晴らしい。本作のテーマなのかもしれません。塹壕を駆け抜けるジョーイからのシーンはぜひ観て欲しい名シーンだと思います。
戦争が終結し、アルバートのもとにジョーイがもどってくる経緯も感動の嵐です。野戦病院での人々、オークションでの少女の祖父らの存在は、まさに人間賛歌となっています。
ラストシーンは、撮影監督ヤヌス・カミンスキーの芸術品です。故郷にもどったアルバートとジョーイ、それを迎える母と父。親子の愛を、なんの会話もなく、すべてはレンガ色の夕景の中のシルエットだけで語られます。
カミンスキーの仕事は、この映画では申し分なく発揮されています。英国の荒涼とした灰色の岩と草原の緑、戦争時の青、そしてラストシーンのレンガ色の空。奇跡的な芸術画として結実し、その美しさを観るだけでも価値があると思います。
いやあ、すばらしかったですね。ジョン・ウイリアムズの音楽も画面にマッチしていて物語を静かにあるいは劇的に盛り上げます。スピルバーグ組の名作がまた一つ生まれたと思います。素直に感動できるエンターティメント作品をぜひ御覧ください。おすすめ!児童文学の原作本も読んでみたいですね。
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